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心残り

今の家に引っ越してきて、今年で丸10年になる。最寄り駅まで5分の距離、南向きだし、贅沢いったらきりがないけど、引っ越す前の同じ町内の部屋が18平米だったのに対し、オートロック、エレベータという削れる部分を削ったら、同じ位の家賃で新築・南向き・26平米という今の物件にたどり着いた。大きな満足もないけど、大きな不満もない。賃貸では後者が大事なような気がする。

その今の家から駅までの間にその会社はある。従業員はざっとみて10人程度。毎日トラックが缶飲料やお菓子のダンボールを搬入している。食品系の卸の会社なのかなと思う。みんなでおそろいの事務服のような服を着て、ちょっと風格があって柔和そうな社長、長年働いて仕事のことなら何でも知ってそうなおじさん、若い事務員のような女の子といった構成だ。

私は毎日その会社の前を通って通勤している。月曜の朝は社長が朝礼で訓示をしている。私が社員の後ろをハイヒールの音を立てて通ると、社員がみんな一斉に振り向く。そう、みんな社長の話が退屈そう。そういえば、私の会社でも昔朝礼をやっていた時代、部長の話が退屈でみんな下を向いていたことを思い出してクスっとしたりする。

そんな変わらない通勤風景が10年続いていた。

一ヶ月前、突然その会社のシャッターが開かなくなった。お正月以外、土曜日も日曜日もいつもシャッターが開いて、あのおじさんや社長がいたのに、シャッターが開かない。おかしいな、社員旅行かな?と思って数日が過ぎたが、シャッターは一向に開かなかった。

昨日、その会社の前を通ったらシャッターが開いていた。でも停まっていたのは搬入のトラックではなく、片付け屋のようなトラック。中にいたのは見慣れた社長でもおじさんでもなく、あまり感情を表に出さないような人たち。その人たちは容赦なくどんどん片付けていた。

三階建てのその会社の建物は、たぶん上は社長の住居だったと思う。屋上まであるような立派な建物だ。今日もその前を通って帰宅したが、上のほうの階に電気が灯ることはなかった。

10年間も前を通っていたのに、私は一度もあの社長やおじさん、あの事務員の女の子と挨拶を交わしたことがない。たぶん、同じ時間にあの会社の前を通る私のことをあの会社の人たちも、みんなで話すことはないにしても、それぞれが知っていたと思う。

私が朝のご挨拶をしたからといって、何かが変わったわけではない。変わらない日常に過ぎない。でも、固く閉まったシャッターの前を通ったら、何だかそのことがとても悔やまれた。

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コメント

ニューヨーク生活も残り8ヶ月というところまで差し掛かってしまいました。結構行ってないところ多かったりして、とりあえず心残りのないように、動き回ろうと思ってるんですけどね~
仕事中心の生活を回してしまうとどうしても行けないところが多いのですよ。
なんと、あの有名なメトロポリタン美術館ですら、こちらに来てからは一度も足を運んでいないニューヨーカーなのでした。もちろん、自由の女神にも行ってないし。

赴任は一生に一度だろうから、次につなげる店の開拓って基本的には必要ないだろうし、ともかくエンジョイしてしまえというのが最近の方針になっています。

しかし、先立つものが・・・

投稿: ニューヨーカー | 2005年7月13日 (水) 06時28分

「心残り」はできるだけない人生にしたいけど、でもそのときはわからないくて、後から気づいたことが「心残り」になったりするわけで・・・
人生はそんなもんなのかもしれません。・・・うーん、どうも最近いうことがジジババくさかったりして(^^;

ニューヨーカーさんも、心残りがないように、NY生活満喫してくださいね!
赴任は一生に一度・・・それもわかんないですよね!

投稿: Yukky | 2005年7月14日 (木) 21時48分

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